以前出土したときのことを市の広報誌で紹介したことのある埴輪である。出土地は大野支所の西方約0.5kmにある二子塚古墳。全長約20mの前方後円墳のくびれ部から、馬の埴輪などといっしょに出土したもので、残っていたのは顔だけで躰の部分は見つかっていない。やや面長の顔の長さは約18cm、中は中空で土器の厚さは約20mmと厚く、耳の部分は省略されて直径6mm程の孔が開いている。額には粘土紐が廻り、帽子か冑を表しているようである。首には飾りの玉がつけられているが、男性の農夫か兵士と思われる。目と口は穴があけられて、ちょっと寂しげで、少しばかり憂いのある目元、そして何か言いたそうな口元、その表情は凛としているが穏やかそうである。
もともと埴輪は古墳の葬送儀礼のために作られたもので、神聖な墓域を区画するための標識のようなものと考えられているんだ。素朴なつくりは牧歌的で古代の風俗や生活を表現しているといわれ、情感的で稚拙な美しさを持っている。1500年もの時代を越え、未来の世界に現れた埴輪。どこか遠くを見つめているようなまなざしは何を物語っているのだろうか。 |
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