第15回 冥府に散る花 -日光山古墳群出土直刀-
2017/04/25
前回に続いてお墓の話。埴輪が古墳を守る一族の象徴なら、石棺に納められた副葬品は、冥府(冥土)に向かう死者の精神的な象徴でもある。
図は津賀の日光山古墳群(13基)の10号墳から出土した鉄の直刀。10号墳は全長約26mの前方後円墳で、後円部の径が約18m、高さは2.3m、前方部長が8m、高さは1mあるんだ。主体部〔死者を埋葬したところ〕は後円部南側裾に検出された箱式石棺で、内からは人骨と直刀4振り、鉄鏃(やじり)が20本も見つかっているんだ。刀と弓矢は武器だから、亡くなった人は戦で活躍した武人だったのかも。生きているときに活躍した証を、冥土の土産にもっていこうとしたのかな。実はこの刀、鍔のところに象嵌といって、鉄地に彫刻して金とか銀を埋め込んだ貴重なものなんだ。今は錆びているけど初めはピカピカ光ってきれいだったと思うよ。レントゲン撮影でわかったんだけど、象嵌の模様は「の」の字に似ていて、もちろん鹿嶋では初めての発見。古墳の埋葬者は地域の中でも有力な豪族と考えられているから、日光山に埋葬された人々は華も実もある、津賀地区を支配した実力者だったんだろうね。