| 平成5年度の春内遺跡の発掘調査で鍛冶工房跡から発見された「羽口」です。羽口とは、鍛冶を行う際に使われた「ふいご」に取り付けられた送風口の部分です。(ふいごとは、炉に空気を送って温度を上げて鉄を溶かし、鉄製品を作るための道具。)
この羽口は、粘土を焼いて作った土製のもので、筒状で真ん中に穴が通っています。炉に挿入された先端部分は溶解し、そこに溶けた鉄滓(鉄を製錬する際に出る鉄くず)が付着していました。
春内遺跡の発掘調査では、東西の長さ約29.4m、南北の幅約5.5mという長大な鍛冶工房跡が発見され、工房内に22基の炉跡が確認されました。この羽口はそこから出土したものの一つです。
春内遺跡で確認された長大な連房式竪穴工房跡は、市内の片岡遺跡・神野向遺跡からも発見されており、いずれも当時の鹿島郡の郡役所「鹿島郡家」(国史跡)に近いことから、古代の郡役所の造営に関わった鍛冶工房だと考えられています。
また、奈良時代に編纂された『常陸国風土記』の香島郡の条には「慶雲元(704)年に国司婇女朝臣が鍛佐備大麻呂たちを率いて若松浜で鉄を採って剣を造った」と記されており、古代から鹿島で製鉄・鍛治が行われていた事がうかがえますが、春内遺跡は、年代的にも風土記の記事を裏付ける製鉄遺跡といえます。
|