第36回 風土記の郷⑥-角折の地名説話

2017/04/25


 奈良時代の地誌である『常陸国風土記』には角折の地名の由来が二説載っています。
一つは昔この地に大蛇が棲んでいて、東方にある海(鹿島灘)に出ようと思い浜に穴を掘っていたときに大蛇の角が折れて落ちたため、角折と付けた説。もう一つは別の人が言っているとして、倭武の天皇がこの浜で仮の宿をおとりになる際、お食事をさし上げようとしたところお飲みになる水が全くなかったので鹿の角を手にして地面を掘ったところ、その角が折れてしまったので名付けた説です。
鹿嶋市内には風土記に遺されている地名が幾つかありますが、地名由来の説話が記されているのは角折だけです。
風土記は奈良時代に国別に編纂されましたが、まとまったかたちで残っているのは常陸・出雲・播磨・肥前・豊後の五カ国です。『常陸国風土記』は真壁郡や河内郡の記事を欠きますが、地名起源説話や伝承など奈良時代の貴重な史料です。

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