第32回 風土記の郷②-墨書土器「方野【かたの】 方 村」

2017/04/25


奈良時代の地誌『常陸国風土記』の鹿嶋の部分には「東と西が海に面して峰や谷が入り組む中に村里が点在しています。(中略)春には花が咲きにおい、秋には木々が紅葉して錦を織りなしている仙人の住む神秘的な地であります」と記されています。
今回はこのように郷の豊かな景色のうちの1つである方野村の地名が書かれた土器を紹介します。土器は奈良時代の竪穴住居跡から出土しました。須恵器と呼ばれる窯で焼かれた青灰色の土器で、高台の付いていない盤の外側の底に「方野 方 村」と墨で書かれていました。この土器の見つかった場所は現在の国道51号バイパス「厨台」交差点の東側100m位の地点です。
「方」とか「方野」と書かれた土器はこれまでに厨台遺跡群では3点見つかっています。現在でもすぐ近くに片野という地名が残っています。風土記の中に鹿嶋の風光明媚な様子が記載され、古代から人の住みやすい土地であったことが想像されます。

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