第9回 -耳輪物語-

2017/04/25


ロード・オブ・ザ・リングという映画が好評だそうで、指にはめると不思議な力を手にすることができる、指輪をめぐる物語ですが、こちらの写真は同じリングでも指輪ならぬ耳輪(耳環)、イヤリングです。宮中野古墳群にある大塚古墳の石室から出土したもので、今でこそ男性がピアスやイヤリングをしても、流行の先端とカッコヨクみられますが、古代ファッショナブルなのは男子、しかも権力者である豪族や王族の様なごく一部の人間に限られていたんです。いわば権力の象徴、自分の力を誇示するシンボルだったんでしょうね。大塚古墳の石室の壁には赤い朱が塗られ、中に安置された棺には金銀に輝く弓や直刀など豪華な武器が副葬されていました。(正確には、いるはずでした。)時の権力者である被葬者は、豪華な金銀に囲まれて永遠の眠りにつくはずでした。ところが、いつの世か、誰か心ない者がその室をこじ開け、しかも埋葬されたものすべてをことごとく破壊しつくしてしまったのです。リングは石室の片隅に、忘れられたように残されていました。何のために、ここまでやる必要があったのでしょうか。棺の蓋は開けられたのに、謎の闇は深まるばかり、未来に残されたリングの物語は果てしなく続いていくようです。

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